音のない世界「ダイアログ・イン・サイレンス」でお腹を鳴らして静寂をブチ壊してしまったお話し

http://dialogue-in-silence.jp/

どうも、くらけんです。
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というエンターテイメントがあって過去2回参加したことがあるんですが、
(その時の感想はこちら→暗闇散歩 | DIALOG IN THE DARK

そこから派生した「ダイアログ・イン・サイレンス」が日本に初上陸されたので行ってきました。
※イベントは超人気のため、すでにチケットは完売しています(当日券は出るかも)。

童心にかえる100%静寂の世界

参加者10数人で一グループとなり、アテンドのスタッフさんに連れられ会場内へ連れられる。
実はそのアテンドさんとは、聴覚障がい者の方。

さらにそこで遮音性100%の分厚いヘッドホンをボフゥ…っと付ける。
すると訪れる…

完全なる無音の世界

一瞬、緊張が走る。
なんせ「シーン」という音すら聞こえないのだ。

聴覚を遮断され、さらに言葉を発するのも禁止となる(会場内は明るい)。
そこでたまたま出会った初対面の参加者たちと、
さまざまなゲームを通して意思疎通しながら奥へと進んでいく。

アテンドの方が身振りや手振り、表情だけでゲームを説明し、
参加者はそれを汲み取ってクイズに答えたりして
「言葉以外のコミュニケーション」で非日常を楽しむ。

簡単な手話も教わった。
実際に相手の目を見て覚えたての手話をすることは、どこか気恥ずかしさがあった。

僕はだんだんと童心にかえっていく感じがした。
言葉がうまく出てこなくて、身振り手振りで大人に意思を伝えるしかなかった子供の頃を思い出す。

不安だった静寂の空間が少し親密さを帯びはじめていた。

関係性がフラットになる

平日だったこともあり、その日の参加者は年配の方や主婦の方が多かった。
別日には外国人も訪れたという。

さまざまなバックボーンを持つ人が入り乱れる中、
あらためて感じたこの「ダイアログ〜」シリーズの醍醐味。
それは、

すべての関係性がフラットになる

ということ。

健常者も障がい者もフラットに。
年齢も性別も地位も国籍さえも、その場ではすべてが平等になる。
(むしろアテンドさんを頼りにするしかないので、その立場は逆転してるのかもしれない。)

誰もが子供のように無邪気に笑ったり恥ずかしがったり。
この空間だけは優劣や上下関係が存在しない。
心地よいニュートラル感。

静寂の中、無意識にまとっていた殻が崩れる音がした。

「不自由」な状況になればなるほど認識できる「自由」

聞こえない、喋れない。
でもゲームを楽しむために意思を伝えたい。
もどかしい…!

そんな状態が約90分続いた。

そして出口へ。

静寂体験が終わって会場を出て、
ヘッドホンを取って喋ることもOKになった瞬間、こう思った。

音が聞こえるし喋れるってのはこんなにもありがたいことなんだな」

僕は終始、心地の良い不自由感を感じていたんだ。

人は、「不自由」さを感じてはじめて、もともとそこに存在していた「自由」を認識できるのかもしれない。

そしてふと自覚させられた。
いかに普段「言葉」というものに頼っているのかを。

特にパソコンやスマホを通したメールやチャットがコミュニケーションのメインになっている今、
失ってしまった何かを思い出していた。

突然訪れた、とある変化…

会場の外でサークル状に囲まれた椅子に座り、全員が向かい合う。

ここからは別のスタッフが進行をつとめ、
安堵の中、感じたことを参加者が語り合う。
そして、

「それではみなさん。
最後に今日の感想、これからの日常で今日の体験をどう活かすか等、
なんでも良いので紙に一言で書いてみましょう。」

と伝えられる。

「まずは静かに心の中で考えてみてください。
再び皆さんで静寂を作りましょう。30秒です。ではスタート」

再び訪れる静寂。

それぞれが今日の貴重な経験を噛みしめながら目を伏せ、
神聖な空気が流れた。

しかしさっきまでの会場内と違うのは
皆、もうヘッドホンをしていないこと。つまりこの時、

「何も聞こえない静寂」

から、

「なんでも聞こえる静寂」

に状況は変化していた。
そして僕自身、別の変化にも気付いていた。

・・・。

(お腹鳴りそう。。)

朝食を食べてから数時間が経っていて、ちょうど胃が空っぽになっていた。

これはまずい。

一生懸命お腹を凹ませたり、逆に張らせたりして、
なんとか身体を誤魔化すが、そんな思いとは裏腹に、
僕のお腹は自己主張を繰り返してくる。

ちょ、まてよ。。

ここでのお腹ぐぅは、映画館や打ち合わせで鳴らしてしまう恥ずかしさの比ではない。

この時ばかりは僕は自分に嘘をつこうと思った。
身体の反応すべてを誤魔化して自分に嘘をつこうと。
親にもついたことないのに。

しかしそんな努力も虚しく、残り5秒になった時その瞬間は訪れた。

ク〜…
ギュルギュルギュルギュルギュル〜!!!

静寂に包まれていた空間に爆音で鳴り響くお腹の音。
神聖な空気をぶち壊し、一瞬にして現場は笑いの渦に変わった。

「すいませんすいません!(>人<;)」

申し訳なさや恥ずかしさでパニックになりながら、
覚えたばかりの手話を駆使して必死に謝った。

「いや〜いいタイミングでしたねぇ(笑)」

とフォローしてくれた優しきスタッフさんに涙。

…これから行かれる方は食事を済ませてからにしましょうね。

p.s.

僕が紙に書いた一言はこちら。

すべてのエネルギーが向かうところに「コミュニケーション」がある気がする。